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出入国管理及び難民認定法改正案の廃案を求める会長声明を発出いたしました

2023.05.23

出入国管理及び難民認定法改正案の廃案を求める会長声明                               

2023年5月23日
全国青年司法書士協議会
会長 荘原 直輝

 政府は、出入国管理及び難民認定法(以下、「入管法」という。)改正案(閣法48号を指し、以下、「本改正案」という。)を国会に提出し、本改正案は、本年5月9日に衆議院本会議で可決し、参議院に送付された。本改正案は、2021年に世論の反対を受け廃案となった入管法改正案を大筋で維持したままのものである。

 しかし、2021年に上記法案が廃案となったのは、入管当局の一存で収容者の処遇が決まる不透明な仕組みが温存され、難民認定申請における送還停止効の回数制限や送還忌避者への刑罰を設けようとした点などの問題を含んでおり、それらについて多くの国民から反対の声が強く上がったからにほかならない。

 さらには、本年4月18日、国連の移住者の人権に関する特別報告者、恣意的拘禁作業部会、宗教または信条の自由に関する特別報告者は、2021年の入管法改正案に続いて2回目となる共同書簡を日本政府に送り、本改正案が世界人権宣言、市民的及び政治的権利に関する国際規約、難民の地位に関する条約、拷問禁止条約等に違反するおそれを指摘している。

全国青年司法書士協議会(以下、「当協議会」という。)は、人権擁護という観点を重視する立場から、以下の理由により、本改正案の廃案を求める。

1.監理措置制度に対する懸念
 本改正案では、収容の長期化を防止する制度として、収容に代わる監理制度を設けた上で、
収容を継続するか監理措置に移行することとされている。しかし、収容する場合の期間の上限は定められておらず、また、収容に関する司法審査の導入がされていないままである。
収容と監理措置の選択を入管当局の判断に委ね、収容に関する司法審査の導入や期間の
上限設定を見送るものであって、現行の収容制度を抜本的に改善し得るものではない。このような現行制度の枠組みを維持したまま監理措置制度を導入したとしても、入管当局に収容の必要性を判断させる以上は、中立性や公平性、透明性は何ら担保されない。基本的人権の最も重要な権利の一つである人身の自由が尊重されるべきことは言うまでもなく、その制限は司法審査による必要最低限度の運用とされるべきである。

2.送還停止効に例外を設けることへの懸念
 本改正案では、現行の難民認定申請者に対する送還停止効に例外を設け、3回目以降の難民認定申請者の送還を可能とする旨の送還停止効の例外が定められている。しかし、そもそも、日本は、諸外国に比べて難民認定率が低いことが指摘されている。かかる状況において、難民認定申請中の者に対する送還停止効に例外を設けて強制送還を可能にすることは、日本が締結した難民の地位に関する条約が保障する、「生命又は自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放し又は送還してはならない」というノン・ルフールマン原則に反するといえる。

3.退去命令制度に対する懸念
 本改正案では、退去強制に必要な出国手続を取らない外国人に対して、かかる手続を取ることや退去することを義務付ける命令を発し、命令に応じない場合には刑事罰を設けるとされている。しかし、被退去強制者の中には、帰国すると生命・身体に危険が及ぶ可能性が高いにもかかわらず何度も難民認定がなされないためにやむを得ず複数回難民申請を行っている者や、日本人の配偶者がいる者、日本で生まれ育ち帰るべき国がないなど様々な事情を抱える人々が多く存在する。罰則付きの退去命令制度を設けたからといって帰国できない状況は変わらず、送還忌避・長期収容問題の解決にはならない。

 当協議会は、市民の権利擁護および法制度の発展に努め、もって社会正義の実現に寄与することを目的とする団体である。当協議会は、朝鮮学校無償化除外問題への対応や外国人学校での法律教室等の取組みを通して、外国籍であっても、すべての人の基本的人権が尊重される社会の実現こそが共生社会の実現を目指す我が国に必要なことであると考える。入管法の改正にあたっては、外国人の生活保障、現在の収容制度の改善、難民が適正に「難民」として認定される制度の確立により日本で保護され人権が保障されるようにすることが先決であると考える。しかし、本改正案に修正の余地はなく、国際人権基準に則した改正にするには、抜本的な再検討が必要であり、今国会で成立させたとあれば、わが国は人権侵害が行われている国との誹りを免れ得ない。

 よって当協議会は、上記の通り、本改正案は見過ごせない重大な問題点を包含しており、断じて許容することができず、その廃案を強く求める。