全国青年司法書士協議会
会長 阿部健太郎
報道によれば、当該会合では自民党の国会議員の一部より「道徳的にLGBTは認められない」「人間は生物学上、種の保存をしなければならず、LGBTはそれに背くもの」という発言がされたという。
また、マスコミに対し「アメリカなんかでは、女子の競技に男性の身体で心が女性だからと競技参加して、メダル取ったり、そういう不条理なこともある」「どういう社会現象が起きるか学ぶべきだ。社会運動化、政治運動化されると副作用もあるのではないか」という発言を行い「性的指向および性自認を理由とする差別は許されない」という法案の記載について懸念を示した議員もいる。
民主主義というものは単なる多数決ではなく、少数者の人権に配慮しつつ、国の政策を定めるものであり、市民の代表である国会議員は、一般の市民以上に少数者の理解につとめ、差別を排除すべき立場にある。
報道が事実であれば、そのような立場の国会議員から、あろうことか「LGBT理解増進法案」の審議という場で、差別発言がされたことになる。
国会議員に対し求められているのは、差別に苦しむセクシュアル・マイノリティの方々の置かれている状況を、立法という形で解消することである。
例えば、セクシュアル・マイノリティ当事者の約半数が学校でいじめを経験している、トランスジェンダー(性自認と身体的性が一致しない人)であることを隠していなかった方が就職活動ですべて不採用になった、などの実際に起きている人権侵害に対しては、「理解増進」などという曖昧な法案ではなく、明確に「差別禁止」規定が必要である。
また、同性婚の法制度がないために人生のパートナーとの関係に法的な保護を得られず苦しむ同性カップルや、要件の厳しさから戸籍上の性別変更ができず、様々な場所で何度も性別を確認され、辛い思いをしているトランスジェンダーの方もおられる。これらは法制度の不備によって起こっていることであり、最高裁判所の違憲判断等を待つまでもなく早急な法改正が求められる。
こういったセクシュアル・マイノリティの方々の苦しみや痛みに寄り添い、その声を聴き、差別を解消していくことこそ、国会議員の責務である。
LGBT理解増進法案については今国会への提出が見送られる公算が大きく、結果的に自民党議員が行ったことは、少数者の苦しみや痛みを理解しようとしないばかりか、偏見や差別を拡散し当事者を傷つけただけ、という本来の責務とは正反対の行為となった。
差別発言を行った議員には、強く反省を求めるとともに、一日も早く差別を解消すべく、国会議員の責務を全うするよう求める。
自民党議員のセクシュアル・マイノリティ差別発言に対する会長声明 はこちらから。