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弁護士・司法書士の不適切な債務整理による被害に対する会長声明を発出いたしました。

2024.09.25

弁護士・司法書士の不適切な債務整理による被害に対する会長声明

2024年 9月25日
全国青年司法書士協議会
会長  坂 田 亮 平

 私たち全国青年司法書士協議会(以下「当協議会」という。)は、全国の青年司法書士約2,200名で構成する「市民の権利擁護及び法制度の発展に努め、もって社会正義の実現に寄与すること」を目的とする団体であり、これまで長年に亘って多重債務問題の抜本的解決に取り組んできた。
 当協議会は、債務整理等について集客のために誇大な大量広告を行い、下記に述べるような不適切な債務整理事件処理を行う弁護士・司法書士事務所(以下「大量広告事務所」という。)が引き起こす被害が市民の権利を侵害する重大な問題であるととらえ、会長声明を発する。

1 大量広告事務所による問題の所在
 インターネット上の広告で弁護士・司法書士が「国が認めた借金救済制度」「借金減額診断」「借金減額シミュレーター」などの文言を用い、あたかも借金が免除されたり減ったりするかのような謳い文句で誘引し過度な期待・誤解を抱かせ、債務整理事件の受任に繋げるようなものが目立っている。さらに、司法書士による大量広告事務所の一部では、日本司法書士会連合会(以下「日司連」という。)の「債務整理事件の処理に関する指針」(以下「指針」という。)第5条において定める「司法書士が債務整理事件の依頼を受けるにあたり依頼者又はその法定代理人と直接面談して、負債の状況、資産及び収入の状況並びに生活の状況等の現状を聴取すること」を遵守せず、債務者の置かれている状況を把握することなく、適切な助言がなされないまま事件処理がなされている実情がある。
 当協議会では以前より問題視してきたが、本年2月には、NHKにおいて、大量広告事務所による誇大なネット広告によりトラブルが相次いでいることが大きく報道され、その後、各地方紙でも大量広告事務所の問題が報道された。

2 被害の実態
 大量広告事務所の不適切な債務整理の結果、債務者の収入、資産その他の生活の状況に見合わない任意整理が選択されたり、本来であれば返済義務がないヤミ金業者に対し、やむを得ない事情がないにもかかわらず、機械的に元金を返済してしまう、などの被害が起きている。
 また、司法書士報酬の額が、日司連の定める「債務整理事件における報酬に関する指針」よりも著しく高額に設定されており、依頼者の支払いが滞った場合には、受任した司法書士が一方的に辞任し、債務者が新たに選任した司法書士に重ねて手続費用を支払わざるをえないなどの被害も出ている。
 大量広告事務所によるこれらの行為は、司法書士という公益性の高い法律専門職能が不適当な執務を行うはずがないであろうという依頼者の心理を利用したもので、法律家による悪質な消費者被害であるといえる。
 債務者の立場に立てば、司法書士からこのような被害を受けるということは、当該大量広告事務所のみならず、司法制度そのものへの信頼を毀損するものであり、強く非難されるべきものである。

3 司法書士としてあるべき姿
 司法書士法第1条は「司法書士は、この法律の定めるところによりその業務とする登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。」と定め、また当協議会は「市民の権利擁護及び法制度の発展に努め、もって社会正義の実現に寄与すること」を目的としている。
 本来われわれ司法書士は、思い悩む市民一人ひとりに寄り添い、伴走し、共に悩みながら執務を行っていくものであると考える。
 具体的には、債務整理業務を行う際は、単純に借金をなんとかすればよいというものではなく、どのようにすれば真に依頼者の生活再建に寄与できるか、という観点から業務を行わなければならない。そのためには、司法書士自身が債務者と面談をし、返済不能に陥った理由など丁寧な聞き取りを行ったうえで、個々の依頼者に必要な支援者や社会保障制度に繋げる等の支援をすべきである。
しかしながら、大量広告事務所による執務は、本来あるべき司法書士の姿からかけ離れたものであり、市民一人ひとりに寄り添ったものとは言い難いと言わざるを得ない。
 本声明では主に司法書士について述べたが、弁護士についても「債務整理事件処理の規律を定める規定」や「業務広告に関する指針」があり、司法書士と同等の社会的責任があることは言うまでもない。

4 当協議会の考え
 当協議会は、司法書士法第1条に定める使命規定及び当協議会の定める目的に従い、こうした被害を根絶するため関係機関と連携し取り締まりの強化を強く求めていくとともに、当協議会の運営する電話相談(ホットライン)等を通じて、引き続き、被害に遭った方々の不安に寄り添い、支援に取り組んでいくことを表明する。