'17-12-15 生活保護基準引下げの動きに強く抗議する会長声明

生活保護基準引下げの動きに強く抗議する会長声明




2017年12月15日

全国青年司法書士協議会
会長 広瀬 隆


 当協議会は、13年連続「全国一斉生活保護110番」をはじめとした生活保護に関連する様々な取組みを実施し、現場で生活に困窮する市民を支援し続けてきた立場から、2017年12月8日の第35回社会保障審議会生活保護基準部会において示された生活保護基準引下げの動きに対して、以下のとおり声明を発する。

                       【声明の趣旨】
  生活保護利用者の現状を無視し、「健康で文化的な生活」を維持し得ていない生活保護利用者をさらに追い詰め、市民生活全般の底下げをもたらす生活保護基準の引き下げの動きに断固反対する。

                       【声明の理由】
 2017年12月8日の第35回社会保障審議会生活保護基準部会において、2018年度からの生活扶助基準本体や、母子加算、児童養育費加算の削減、学習支援費の廃止等の方針が示された。それによると、生活扶助費は、夫婦子2人世帯(都市部)で18万5270円から15万9960円へと2万5310円(13.7%)、子2人の母子世帯(都市部)で15万5250円から14万4240円へと1万1010円(7.1%)もの大幅削減となる可能性がある。子どものいる世帯に対する生活保護費削減は2013年度にも行われている。相次ぐ引き下げは現代日本の社会問題となっている格差と貧困の拡大を無視しており、子どもが安心して生活し成長する機会を奪うことは、子ども時代の不利益にとどまらず、憲法26条が保障する教育を受ける権利(学習権)の見地からも次の世代の貧困をも生み出す連鎖を助長するもので断じて容認できない。
 そもそも、今回の引き下げの考え方は、第1十分位という、所得階層を10に分けた一番下位(下位10%)の階層の消費水準に合わせて生活保護基準を引き下げるものであるが、生活保護制度利用者が増えているとはいえ、困窮にあえぐ多くの市民が生活保護制度を利用できていない現実がまだまだある。捕捉率(生活保護基準以下の世帯で、実際に生活保護制度を利用している世帯数の割合)は2~3割程度である。本来、国は、憲法25条「健康で文化的な生活」を保障するために人として尊厳ある生活を保障し、必要な人が生活保護制度を利用しやすいようにしなければならない。しかしながら、現実は、生活保護が利用できるにもかかわらず窓口で追い返されたり、正当な理由無く生活保護を打ち切られるという保護の現場における違法・不当な運用は後を絶たない。当協議会は、13年連続で「全国一斉生活保護110番」を実施しているが、住宅扶助基準の引下げや冬季加算の引下げが行われた平成27年度には、全国各地から7,893件、平成28年度は7650件もの架電があり、平成27年度は459件、平成28年度は536件もの相談に応じたが、上記のような生活保護行政による多くの違法・不当な運用により、逼迫した現状を訴える相談が数多く寄せられている。
 このような状況の中、第1十分位の消費水準に合わせて生活保護基準を引き下げることは、生活保護制度を利用できるのに利用していない低所得者層と生活保護基準を比べることになり、当然生活保護基準が高いという結果になり、これでは、どこまでも生活保護基準を下げ続ける「引き下げスパイラル」を招くことになる。
 また生活保護基準は、最低賃金、住民税非課税基準、就学援助など様々な低所得者施策と連動しており、生活保護基準の引き下げは、生活保護制度を利用していない市民全般の生活水準の引き下げにもつながる。
 よって、当協議会は、生活保護利用者の生活実態を考慮せず、貧困の拡大連鎖につながる今回の根拠なき生活保護基準の引き下げの動きに断固反対するものである。


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