民法等の一部を改正する法律等が成立したことを受けて(会長声明)
2021年5月6日
全国青年司法書士協議会
会長 阿部健太郎
令和3年4月21日 相続登記の義務化を含む民法等の一部を改正する法律(以下、「本法律」という。)及び相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律が成立したことを受けて、以下の通り声明を発する。
本法律は、所有者不明土地問題を解消することを主な目的としており、その中でも長期相続登記未了問題を解消するため、不動産登記名義人が死亡した場合に、その相続人に対し相続登記の申請または、今回新設された相続人申告登記の申出のいずれかを、原則3年以内に行うことを義務づけると共に、不動産登記名義人の住所や氏名の変更があった場合の変更登記も原則2年以内に行うことを義務づける内容を含んでいる。
当協議会は、所有者不明土地問題の本質的な改善を行うにあたり、本法律では手当てが不十分であるとして、終始一貫して消極の意見を表明してきた。
我々は本法律成立後も、以下の課題解消を含め、所有者不明土地問題の抜本的改善に寄与することができるよう、継続して取り組みを行うと共に、今後予定されている法務省令などの検討状況を注視し、市民の負担軽減を図り、問題の本質的改善に資する制度となるよう、引き続き意見・提言を発信していくことを、ここに改めて表明する。
解消すべき課題
①長期相続登記未了問題の解消にあたっては、関係当事者間において権利の帰属主体に関する合意が形成され、終局的な権利帰属が確定することが必要である。相続登記の義務化によって、法定相続登記や相続人申告登記が増大したとしても、関係当事者において合意形成がなされなければ本質的な改善には繋がらないため、関係当事者間にて自律的な合意形成を促進するための施策が必要である。
②相続登記及び所有権登記名義人の表示変更登記の義務付けに際し、義務を免れる正当事由を明確にし、公平性を担保すると同時に、不意打ち的に過料の制裁がなされることがないよう周知を行う必要がある。
③相続登記申告登記は、中長期的な公示としての機能を考えた場合、不完全な面があるため、運用において改善できる範囲での対応が必要である。
④プライバシーや個人情報に対する市民の意識の高まりと、登記の公益性との均衡を考慮したうえで、登記記録の公示の在り方の再検討が必要である。
我々司法書士は、登記手続や、裁判所提出書類の作成、財産管理などの業務を通じ、日々相続に関する相談に対応しており、相続手続について高度な専門性を有した国家資格者である。所有者不明土地の解消は、我が国が直面している大きな社会的課題であるが、国民の代表による国会審議の場で、その解決のために果たすべき重大な役割が、司法書士に求められていることが明らかになった。
我々司法書士は相続手続の専門家として、本法律に定められた施策に加え、市民に寄り添い、市民が必要としている支援を総合的に行うことで、市民の権利を擁護し、自由かつ公正な社会形成に資する所存である。