東日本大震災発生から10年を迎えて(会長声明)
2021年3月11日
全国青年司法書士協議会
会長 阿部健太郎
2011年3月11日に発生した東日本大震災(以下「震災」という)から、本日で10年を迎えました。
あらためまして、犠牲となられた方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに、ご遺族の皆様には心よりお悔やみを申し上げます。
全国の青年司法書士約2500名で構成する私たち全国青年司法書士協議会は、被災や被害の事実を忘れず、そして被災者や被害者に寄り添い、手を携えながら、ともに真の復興を目指していく決意を新たにし、ここに声明を発します。
三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の震災により、東日本を中心に日本全体が未曽有の被害を受けました。広範に及ぶ各被災地では、被災の状況も復興への道のりもそれぞれに事情が異なります。
当協議会は2021年3月5日から7日の3日間をかけて被災地を巡りました。津波の被害を受けた沿岸部は防潮堤が造られ、新たな住宅や施設が建設され、高速道路をはじめとした道路の整備も進み、復興は進んでいるように見えます。
しかし、10年が経過しても、被災者の心の傷は癒えることはありません。復興による町の再建により、震災の傷跡は徐々に目に見えなくなっておりますが、そこで生きる人々の生活が、震災前に復した訳では決してありません。報道機関の調査によれば被災三県の人口は発災前に比べ38万人減少し、沿岸地域では人口が4割超減少している地域もあります。福島県では現在でも帰還困難区域に指定された7つの市町村があります。避難指示が解除された地域も、実際に戻って生活を始めた方は住民登録者の3割程度に留まっております。(参照:NHKデータで見る復興予算) 高齢化や過疎化といった、わが国が抱える社会的課題が、被災地の復興をさらに難しいものとしています。
被災地における法的な支援の必要性も復興支援だけでなく、司法過疎地支援という形に変容が見られます。「東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律」も2021年3月31日をもって失効し、震災法律援助が終了するなど、10年という節目により、様々な法的支援施策が期限を迎え、復興後の生活から生じる諸問題への法的支援があらためて課題として顕在化しています。
実際に被災した地域を訪れ、10年経過した『今』を見聞したとき、「復興」と「次なる災害への備え」という2つの課題を克服すべく、根気強く、地域創生に尽力されたことを知ると同時に、それでもまだ復興へは遠い道のりであり、法的な支援も継続する必要性を感じます。
東京電力福島第一原子力発電所事故(以下「原発事故」という。)の被害救済に関しても、特定原子力損害に係わる損害賠償請求に関する消滅時効期間は「東日本大震災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かつ確実な賠償を実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効等の特例に関する法律」により損害及び加害者を知った時から10年と定められているところ、被害にあった住民に対する賠償手続きが未了であるにも関わらず、原発事故から10年を迎えます。当協議会は東京電力の消滅時効に対する対応において、被害者が消滅時効の制度により請求を妨げられることがないように最大限の関心をもって注視しています。
当協議会は、市民の権利擁護団体として、全国の青年司法書士のネットワークを活用し、震災直後から専門の委員会を立ち上げ、電話相談会や市民向けフォーラムなどの被災者支援のほか、仮設住宅への個別巡回見守り相談を通じて被災者の声に耳を傾けてまいりました。必要な支援がそれぞれ異なるように、生活再建や復興のかたちも、また様々です。
私たちは、震災を風化させることなく、これからも被災地へ赴き、そこで暮らす一人ひとりに寄り添い、すべての被災者が心から復興したと思えるその日まで、これからも支援し、共に歩み続けていきます。