新型コロナウイルスワクチン接種と自己決定権に関する
青年司法書士10団体による共同声明
私たちは、市民の権利擁護を使命とする司法書士として、新型コロナウイルスのワクチン接種に際し、市民の人権が侵害されることのないよう、以下の通り共同声明を発出する。
中国の湖北省武漢で最初に確認された新型コロナウイルスの感染者が発症したとされる令和1年12月8日から、1年半以上が経過したが、新型コロナウイルスの猛威は留まるところ知らず、全世界に拡大している。我が国でも、感染予防のために、緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置などを発令し、市民の行動制限を行っているが、収束の兆しは見えない。
本年2月からは我が国でも新型コロナウイルスのワクチン(以下「ワクチン」という)接種が開始され、医療従事者や高齢者を中心に接種が行われている。今後、1日100万回接種を目指す政府方針のもと、ワクチン接種が加速度的に進むものと思われる。目に見えないウイルスと対峙し、日常生活を取り戻すために、ワクチン接種が進むことは重要であり、公衆衛生の側面からも非常に重大な役割がある。
その一方でワクチン接種は、それぞれ1人1人の自己決定に委ねられるべきことであり、外部から強要されたり、同調圧力などが生じることはあってはならない。ワクチンの接種にあたっては、持病や体質などによって接種を受けることが困難であるケースや、接種後に一定の副反応が生じる可能性があることから接種に抵抗を感じるケースもある。また、十分な臨床を経ておらず、ワクチンが中長期的に人体に及ぼす影響などを懸念して、接種に消極であるケースなども想定される。いずれのケースにおいても、理由の如何を問わずワクチンを接種していないことを理由とした、不当な取り扱いや、差別が許されないことは当然である。
ワクチンを接種していないことを理由とした差別や不利益的な取り扱いなどの、いわゆる「ワクチンハラスメント」が広がることはあってはならない。新型コロナウイルスの感染拡大防止は公共の福祉に適うという理由で、自己のワクチン接種を決定する権利を制限することは認められない。いかなる職業や立場であっても、接種の判断は憲法13条で保障する自己決定権の範疇であることを改めて確認し、そのことは学校や職場、地域をはじめとしたコミュニティーにおいて、共有すべき価値観であると考える。
ワクチン接種を自己決定するためには、ワクチンに対する正確かつ詳細な情報開示が重要である。ワクチンの有効性や安全性、身体に与える影響など、情報を適切かつ適時に開示する必要がある。今後、ワクチン接種が広がる際に、接種現場で得られた知見についても、速やかに公表し、市民の自己決定の参考となるようにすべきである。また、医師によるインフォームドコンセントも大事になることから、接種に際し、医師から説明を受けることができる環境の整備も必要である。
私たち司法書士は、ワクチン接種にあたっては、1人1人の自己決定を尊重し、外部から接種を強要することも、接種を妨害することも許されないとの考えのもと、今後のワクチン接種状況を注視し、新型コロナウイルスへの対応を理由に人権が侵害されることが無いよう、引き続き対応を行っていく。
以上
全国青年司法書士協議会
会 長 阿部 健太郎
茨城青年司法書士協議会
会 長 宮部 正樹
岩手県青年司法書士会
会 長 中居 純平
沖縄県司法書士青年の会
会 長 金城 仁史
鹿児島県青年司法書士会
会 長 竹中 寛子
神奈川青年司法書士協議会
会 長 髙橋 良輔
釧路青年司法書士協議会
会 長 久保 信行
奈良青年司法書士会
会 長 中川 誠司
福岡県青年司法書士協議会
会 長 前田 美穂
山口県青年司法書士協議会
会 長 佐々木 利久