同性婚の実現に向けた法整備を行うことを強く求める会長声明
2021年5月19日
全国青年司法書士協議会
会長 阿部健太郎
同性カップル3組が、同性の者同士の結婚を認めていない民法及び戸籍法の規定は憲法13条、14条1項及び24条に違反するとし、国に対し立法不作為に基づく慰謝料を求めた裁判で、本年3月17日、札幌地方裁判所の判決が言い渡された。これを受け、当協議会は以下の通り声明を発する。
裁判所は、慰謝料についての請求は棄却したものの、「立法府は同性間の婚姻及び家族に関する事項を定めるについて、広範な立法裁量を有している」が、「同性愛者に対しては、婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないとしていることは、その裁量権の範囲を超えたものであるといわざるを得ず、合理的根拠を欠く差別取扱いに当たる」として、憲法第14条第1項(法の下の平等)に違反することを認めた。
結論である損害賠償に関する部分においては原告敗訴の判決となったが、当協議会は、憲法違反を認めた裁判所の判断について高く評価する。
同性愛者については過去の歴史を遡ると、精神疾患や個人の趣味嗜好の問題という誤った認識により謂れのない差別を受けてきた。現在、「異性愛者と同性愛者の違いは、人の意思によって選択・変更し得ない性的指向の差異でしかない」ことは医学的にも証明され、近年は、同性パートナーシップ制度を導入する地方自治体や、同性パートナーに対応する商品やサービスを提供する企業も増加している。各種世論調査などでも、国民の間に同性婚への肯定的意見や同性カップルに法的保障を求める意見が増加するなど、社会的にも理解が進んでいる状況にある。今後も性的指向による区別取扱いの解消を求める国民意識は高まり続けるものと考えられる。
相手が異性であれば、結婚という選択肢を選ぶ状況において、たまたま愛する者が同性であったという1点をもって、結婚の選択肢を選ぶことが出来ないことは、差別以外の何物でもない。「婚姻の本質は、両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むことにあるが、異性愛と同性愛の差異は性的指向の違いのみであることからすれば、同性愛者であっても、その性的指向と合致する同性との間で、婚姻している異性同士と同様、婚姻の本質を伴った共同生活を営むことができる」との判示が、日本中の当事者を勇気づけるものであることを期待する。
人権擁護活動は市民の権利擁護を使命とするわれわれ司法書士に課せられた社会的責務である。当協議会は、法律家団体として、各種相談活動により今まさに問題を抱えている市民一人ひとりと真摯に向き合いながら、様々な問題に対する研究や制度改善活動を通し、違いを認め合いながら共に生きることができる社会の実現に向けて活動している。
今回の同性婚訴訟についても、当協議会は、「一般社団法人Marriage For All Japan-結婚の自由をすべての人に」の賛同団体として、各地のプライドパレードに参加するなど同性婚の実現に向けて応援してきた。今回の司法判断に至る経緯は、自由のために勇気をもって立ち上がった原告当事者及び弁護団の方々、その他多くの賛同者の活動の結果であり、その尽力に敬意を表す。それに応えるべく、現状が憲法に違反することを裁判所が宣言したことは大きな前進ではあるが、長い間異質なものとして好奇の目にさらされ、その尊厳を傷つけられ、差別を受けてきた同性愛者らにとっては、今回の判決で同性婚が認められたわけではなく、現状は何も変わっていない。
国は、今回の司法判断を真摯に受け止め、一日も早い同性婚の実現に向けた法整備を行うことを強く求める。
札幌地裁判決を受けてもなお、「婚姻に関する民法の規定が憲法に反するものとは考えていない」との立場を表明した政府の姿勢を受け、原告らはさらなる前進を求め控訴した。当協議会は、「結婚の自由をすべての人々に」という理念に賛同し、原告らの訴訟活動を応援するとともに、性的指向に関わらず、すべての人が平等に自分らしく生きることができる社会を目指して今後も活動していく。