「消費者基本計画工程表」素案に対する意見書
2020年5月29日
全国青年司法書士協議会
会長 川上真吾
1 施策番号Ⅰ(2)①(38ページ)
特定商取引法の見直しの項目に次期法改正に向けた検討内容として「事前拒否者への勧誘禁止」を明記するとともに、そのスケジューリングを明記することが必要である。
平成28年特定商取引法改正においては、訪問販売・電話勧誘販売における事前拒否者への勧誘禁止(いわゆる不招請勧誘規制)については見送られている。高齢者の消費者被害の防止を行うには不可欠の規制であり、明確な検討課題とし、早期の実現に向けてスケジュールを策定すべきと考えられる。
2 施策番号Ⅰ(2)⑥(87ページ)
ヤミ金融事犯の取り締まりの強化について、新しい形態のヤミ金融事犯の実態把握と取り締まりを行っていくべきである。
現在、インターネット上で「個人間融資」や「給与ファクタリング」と謳い、金銭の貸付け等を行う者が現れている。個人間融資については、未登録業者があたかも個人であるように装い、金銭の貸付け等を行っているものが一定数存在すると言われている。また給与ファクタリングについては、給料債権の売買及び無利息を謳いながら、年利換算100%超の高金利を徴収している業者が現れている。令和2年3月5日、金融庁は、給与ファクタリングについて、貸金業法第2条第1項の「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法」に該当し、業として行うものは貸金業に該当する旨の回答を行った。これにより、給与ファクタリング業を行うもののうち、未登録業者の貸付はヤミ金融に該当することが明確になった。
ヤミ金融事犯の取締りの推進を掲げるのであれば、従来のヤミ金融の形態に加え、これらの新しい形態のヤミ金融業者による被害実態の把握を進め、金融庁、警察庁と協調し、消費者に対し注意喚起を促すとともに、徹底した取り締まりの強化などの措置を講じていく必要があると考える。
3 施策番号Ⅰ(3)⑥(117ページ)
多重債務問題改善プログラムについて、貸金業者が保証会社となる銀行等のカードローンが総量規制の対象となっていないことを明記するとともに、金融庁と協調し、銀行カードローン問題の解消に向けた具体策を検討することを明記することが必要である。
施策の中で、3)多重債務者発生予防のための金融経済教育の強化が挙げられているが、 昨今、個人向け銀行カードローン残高の大幅増加に伴い、改正貸金業法成立以降、これまで減少し続けてきた自己破産申立件数が増加に転じたことが問題になっている。こうした状況を踏まえ、多重債務問題の抜本的解決のために、貸金業者が保証会社となる銀行等カードローンが総量規制の対象になっていないことを明記し、金融庁と協調し、銀行カードローンに対する総量規制など新たな規制を創設する等の問題解消に向けた具体策を検討すべきであると考える。