'17-10-31 バラエティー番組における同性愛表現等の差別的表現について改善を求める会長声明を発出いたしました

バラエティー番組における同性愛表現等の差別的表現について改善を求める会長声明




2017年10月31日

全国青年司法書士協議会
会長 広瀬 隆


 2017年9月28日、株式会社フジテレビジョンが放送したバラエティー番組「とんねるずのみなさんのおかげでした30周年SP」において、「保毛尾田保毛男(ほもおだほもお)」と称するキャラクターが登場した。そのキャラクター名及び台詞の内容から、保毛尾田保毛男が男性同性愛者を表象し、かつ揶揄したものであることは一目で分かるものであり、嘲笑の対象として描くものであった。この放送内容について、抗議が殺到し、株式会社フジテレビジョンの社長が謝罪するに至ったことは既知のとおりである。

 一般社団法人日本民間放送連盟は、放送基準を定めており、同第77条には「性的少数者を取り上げる場合は、その人権に十分配慮する。」と規定されている。また、同基準の先例集である民放連放送基準解説書は、同条に反する事例として、
 ● 番組中の「ホモの見分け方」コーナーに対し、ゲイ団体から「私たち同性愛者を笑いものにし、侮辱するものだ」と抗議があった。当該団体と話し合った結果、同性愛者、同性愛についての認識不足と判断し、このコーナーを中止した。
 ● 「こわくて行けない場所」というタイトルで、隠しカメラで撮影したホモセクシュアルのキスシーンなどを流しながら、ゲストが同性愛についてトークする番組。同性愛者を揶揄する内容で人権を侵害したと抗議を受けた。
などを挙げている。
 民間放送事業者らは、同性愛者を嘲笑・揶揄することが、同性愛者の人権を侵害するものであることを、すでに過去の失敗の積み重ねによって学習し、先例に学んでいるはずである。にもかかわらず、今般、株式会社フジテレビジョンにより、上記の差別的表現を含む番組の放送がなされてしまっている。
 2009年11月17日、日本放送協会及び一般社団法人日本民間放送連盟が設置した放送倫理・番組向上機構 放送倫理検証委員会は「最近のテレビ・バラエティー番組に関する意見」を決定した。同意見は、バラエティー番組が人々をタブーから解放し、より自由で風通しの良い社会を作ることに貢献してきたと高く評価する一方で、相当数の視聴者がバラエティー番組に対し、不快感・嫌悪感を持ち、反発している旨を指摘している。その上で、視聴者が嫌悪し反発する背景には、価値観の多様化や社会の構造変化などがあり、制作者と視聴者の意識の間にズレが生じたことが原因ではないかと分析している。
2009年の上記意見から約8年が経過し、同性愛者をはじめとするセクシュアル・マイノリティ当事者を社会で包摂する機運がさらに高まっている。今回の放映は、番組制作の現場において、このような時代認識が欠けており、その結果、「制作者と視聴者の意識の間のズレ」が十分に解消されていなかったことの証左であると思われる。
 
 ただ、時代背景の変化に関わらず、セクシュアル・マイノリティ当事者を揶揄し、差別する内容の放送自体が断じて許されないことは当然である。また、過去に行われてきたセクシュアル・マイノリティ当事者を揶揄・差別する内容の放送により、セクシュアル・マイノリティ当事者の人権が不当に侵害され、場合によっては回復困難な被害を受けてきたことを、メディア各社は十分に省みるべきである。そもそも、同性愛も多様な性のあり方のひとつなのであり、これを奇異なものとして扱うこと自体が改められなければならない。
 
 当協議会は、これを契機に、メディア各社が、バラエティー番組等において、表現内容が差別的になっていないか十分に検討する体制を構築し、また、同性愛表現等の差別的表現により、当事者の人権が侵害され、その影響力により、甚大な被害が発生する可能性を十分に認識することを求めるとともに、放送業界全体が、差別的表現による人権侵害の防止に向けた改善策の策定に向けて取り組んでいくことを強く求めるものである。


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