倒産手続のIT化に関する要綱案の取りまとめを受けて引き続き破産公告の見直しを求める会長声明
2023年3月2日
全国青年司法書士協議会
会長 内田 雅之
令和5年1月20日、法制審議会民事執行・民事保全・倒産及び家事事件等に関する手続(IT化関係)部会第17回会議において、倒産法制を含む各種手続のIT化に関する要綱案の取りまとめが行われた。
要綱案に基づき、家事事件・倒産事件等のIT化が行われ、オンライン出頭やオンライン申立が実現することにより、司法手続の利用者たる国民の利便性が高まり、もって司法アクセスが拡充されることには賛意を表し、早期の実現を期待するものである。
一方、破産公告に関して、公開された要綱案によれば、何らの記載はない。この点、第16回部会資料20-2(要綱案説明付き)を確認すると、「これまでの会議では、上記のとおり、今すぐに解決していかなければならないとの指摘もあったものの、意見の多くは、この部会において、結論を出すことはできない問題であり、破産法全体の制度を整合的に考えて議論すべき問題であるというものであった。」との記載で締めくくられ、事実上棚上げされてしまった。
これまで当協議会は、いわゆる「破産者マップ事件」等の発生により当事者の生活再建が阻害されている現状を踏まえ、令和4年6月24日付「破産公告等に関する意見書」を法制審議会部会に提出し、「民事執行・民事保全・倒産及び家事事件等に関する手続(IT化関係)の見直しに関する中間試案に関する意見募集」に対して、令和4年10月18日付意見書を提出し、この中で繰り返し個人破産に関する破産公告の廃止を含む具体的改善案を提言してきた。また、中間試案に関する意見募集結果によれば、個人破産者の公告の在り方を見直すことを検討することに賛成する意見は、160件を超えており、国民の関心も非常に高かっただけに、IT化を目的とする今回の法制審議会部会でインターネット社会におけるプライバシー保護と手続的必要性の妥協点を真正面から議論し、改善に向けた結論を出せなかったことについては残念でならない。
他方で、令和5年1月 11 日、個人情報保護委員会が、インターネット版官報に掲載された破産公告情報を不当に流用したと見られる個人の住所・氏名を地図上に表記しているウェブサイト(いわゆる「新・破産者マップ」)の運営者について、個人情報保護法が定める罰則に抵触しているものとして、関係捜査機関への告発を実施するなど、取り締まりを強化しているものの、残念ながら令和5年2月28日現在、閉鎖には至っていない。また、令和5年1月27日付閣議了解を踏まえ、同日以降、官報を添付書面として提出すべき申請をオンラインで行う際に、官報の代わりにインターネット版官報を提出することができるよう、官報とインターネット版官報の内容の同一性を確保するなど官報電子化に関する動きも加速している。このように官報を利用する破産公告のあり方について、状況は刻一刻と変化しており、より一層議論が求められている状況にあると言える。
そこで、当協議会は、改めて個人破産の破産公告の廃止を強く主張するとともに、今回の法制審議会部会で積み残しとなった破産公告の論点について、破産法改正を視野に入れて、新たな検討会や法制審議会等において、速やかに議論を開始することを強く求める。また、当協議会の運営する電話相談窓口(ホットライン)等を通じて、引き続き、掲載された方々の不安に寄り添い、支援に取り組んでいくことを表明する。