'22-09-09 「閣議決定による故安倍晋三元内閣総理大臣の国葬の実施に反対し、 閣議決定の撤回と国会審議を求める会長声明」を発出いたしました。

閣議決定による故安倍晋三元内閣総理大臣の国葬の実施に反対し、
閣議決定の撤回と国会審議を求める会長声明



2022年9月9日

全国青年司法書士協議会
会長 内田 雅之


 令和4年7月8日、安倍晋三元内閣総理大臣が、第26回参議院議員通常選挙の応援演説中に背後から銃撃を受け、治療の甲斐なく死去した。理由の如何にかかわらず、自身の願望を暴力によって実現する行為を強く非難するとともに、故人に対し哀悼の意を表する。
 これを受け、岸田文雄内閣総理大臣は7月22日、安倍晋三元内閣総理大臣の国葬を9月27日に執り行うことを閣議決定(以下「本閣議決定」という)した。しかしながら当協議会は、本閣議決定を根拠とする国葬の実施には法治主義及び財政民主主義の観点から問題があると考え、政府に対し本閣議決定の撤回と国会審議を求める。

 行政は、議会において成立した法律に基づいて行わなければならない(法治主義)。
 大正15年10月21日に公布された国葬令は、「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律」により、昭和22年12月31日の経過をもって失効し、それに代わる法令は制定されていない。国葬令第3条には「国家に偉勲ある者薨去又は死亡したるときは特旨により国葬を賜うことあるべし。前項の特旨は勅書を以てし内閣総理大臣これを公告す」と規定され、まさに全体主義・天皇主権を前提とするものである。個人の尊重、法の下の平等及び国民主権を謳う日本国憲法の施行とともに、「国葬」を行う前提価値そのものが消滅したといって過言ではない。
 戦後唯一の国葬である吉田茂元内閣総理大臣の際は、当時の佐藤栄作内閣が野党の反対を押し切って閣議決定により実施された。その佐藤栄作元内閣総理大臣は、安倍晋三元内閣総理大臣に次ぐ首相在任期間を誇りノーベル平和賞も受賞しているが、野党の反対と内閣法制局の「法的根拠が乏しい」との見解を受け「国民葬」の形式で行われ、その後は国が関与するにしてもほとんどが内閣・自民党合同葬という形式により行われている。
 これらの経緯を踏まえてか、今回、岸田文雄内閣総理大臣は「国葬儀」という説明をしているものの、単なる呼称の違いに過ぎず本質的には国を挙げて功績を讃える点において国葬令にいう「国葬」に異ならない。その意義・目的を「暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜くという決意を示す」と説明するが、報道等により明らかとなっている情報によれば、本件犯行は暴力により民主主義を破壊しようとした行為と言えるか疑問であり、翻って本閣議決定による国葬の実施こそが、国会は国権の最高機関であり唯一の立法機関であることを定めた憲法第41条に反し、民主主義的手続きに違背すると言わざるを得ない。
 国葬の法的根拠についても、内閣府設置法第4条第3項第33号「国の儀式並びに内閣の行う儀式及び行事に関する事務に関すること」を根拠と主張するが、これは法令等によって国が儀式等を行う場合に、特に所掌が定められている場合を除いては内閣府が所掌するという意味に過ぎず、この規定があるからといって法令にない儀式を内閣の判断で自由に執り行えると解するのはまったく妥当でない。
 以上のような種々の問題があるにもかかわらず、閣議決定のみで法的根拠のない国葬を実施し、その費用全額を事前の国会承認の必要ない予備費から支出することは、財政民主主義の観点からも是認することができない。なお、予備費の使用にあたっては、「予備費の使用等について」(昭和29年4月16日閣議決定)が存在し、「3 国会開会中は、第1項の経費及び次に掲げる経費を除き、予備費の使用は行わない。」とあるところ、参議院議員通常選挙後の臨時国会はわずか3日のみの会期であったほか、8月18日には野党6党派により憲法第53条に基づく臨時国会の召集要求がなされていることも指摘しなければならない。内閣は直ちに臨時国会の召集を決定し、国葬実施の可否及び実施の場合における補正予算に関する国会審議を早急に行うべきであると考える。

 以上の理由により、当協議会は、本閣議決定による故安倍晋三元内閣総理大臣の国葬の実施に反対し、政府に対し本閣議決定の撤回と国会審議を通じた国葬実施の適否及び予算等の議論を求めるものである。


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