意見書・声明文

2010年04月28日
労働者派遣法の抜本改正を求める会長声明

 
 私たち全国青年司法書士協議会(以下「当協議会」と言う。)は、全国の青年司法書士約3,100名で構成する「市民の権利擁護及び法制度の発展に努め、もって社会正義の実現に寄与すること」を目的とする団体である。

 政府が本国会に提出した労働者派遣法改正案(以下、「改正案」と言う。)に対し、次のとおり声明を発表する。


■ 声明の趣旨 ■

1.登録型派遣は、一切の例外なく全面的に禁止すべきである。

2.製造業務への派遣は禁止すべきである。仮に、常用型派遣に限り製造業務への派遣を許容するにしても、常用型派遣についての定義規定を置き、期間の定めのない雇用契約を締結している労働者の派遣に限定すべきである。

3.違法派遣の場合における直接雇用のみなし規定については、適用対象を、改正案に列挙されている違法派遣に限らず、違法派遣が行われた場合を広く対象とすべきである。また、本規定によって擬制される派遣先事業主と派遣労働者との間の雇用契約は、期間の定めのない雇用契約とし、両者間の労働条件については、派遣先事業主に雇用される他の同種の労働者の労働条件と同等とすべきである。


■ 声明の理由 ■

 政府は、本年4月6日、改正案を衆議院に提出した。当協議会においては、平成20年12月24日に「労働者派遣法の抜本改正を求める意見書」を発表して以来、今日に至るまで、同法の抜本改正を強く求めてきたところであるが、改正案は、派遣労働者の保護に資するものとは到底言えず、あらためて、真に派遣労働者の保護に値する抜本改正を求めるため、本声明を発表するものである。

 第1に、改正案は登録型派遣を原則として禁止しておきながら、専門26業務については例外的に許容する内容となっている。この点について当協議会は昨年5月26日に発表した意見書において、登録型派遣は全面的に禁止すべき旨の意見を表明したところであり、今般の改正案においても、登録型派遣については、一切の例外を認めることなく全面的に禁止するよう修正すべきである。

 そもそも登録型派遣は、派遣先・派遣元事業主間の契約に基づくダンピングの影響を直接受けるため、明日の雇用さえ確保されない究極の不安定雇用であり、雇用の安定と労働条件の確保といった労働者派遣法の基本理念とは程遠い雇用形態である。また、多くの裁判例において、登録型派遣の労働者は長期間にわたり就業していたとしても雇用継続に向けた期待は法的に保護されないと判示されており、このような期待権すら認められない登録型派遣は到底是認されるべきではないと考える。これまで、派遣先・派遣元事業主の都合により労働力を使い捨てられてきた派遣労働者の立場に今一度立ち返り、登録型派遣は全面的に禁止すべきである。

 第2に、改正案は、製造業務への派遣を、常用型派遣に限り許容している。労災等のリスクの高い製造業務においては、使用者責任が不明確となりやすい労働者派遣は、本来行われるべきではない。また、製造業務は景気の影響を直接受けるため、製造業務への派遣は不安定雇用を招くこととなる。したがって、製造業務への派遣は登録型派遣であると常用型派遣であると問わず全面的に禁止すべきであると考える。

 仮に、常用型派遣において製造業務への派遣を許容するとしても、改正案は常用型派遣の定義規定を設けていないため問題が残る。つまり、常用型派遣とは、常時雇用される労働者の派遣であって、本来期間の定めのない雇用契約により派遣元事業主に雇用された労働者の派遣を意味するはずある。しかし、現在の行政解釈によれば、有期雇用契約の労働者の派遣も常用型派遣と認められる場合があり、登録型派遣の禁止が潜脱されてしまう恐れがある。したがって、製造業務への派遣を常用型派遣に限り許容するにしても、その前提として、常用型派遣の定義規定を置き、期間の定めのない雇用契約を締結している労働者の派遣に限定すべきである。

 第3に、改正案は、偽装請負等の違法派遣が行われた場合における派遣先事業主の直接雇用のみなし規定を新たに導入している。この制度は、違法派遣により収益を上げた派遣先事業主に派遣労働者に対する雇用責任を負担させるものであり評価できる。しかし、この規定の適用対象を、偽装請負が行われた場合等改正案に掲げられている違法派遣に限るものとすると、適用範囲が極めて狭くなり、この規定が有名無実化する恐れがある。したがって、改正案に掲げられている違法派遣を例示列挙とし、他の派遣法違反がある場合にも適用されるものと修正すべきである。

 また、本規定が適用される場合でも、擬制される雇用契約が有期雇用契約であれば、結局は不安定雇用であることに変わりなく派遣労働者の保護にはつながらない。したがって、擬制される雇用契約は、期間の定めのない雇用契約とすべきである。また、賃金等の労働条件については、派遣先事業主に雇用される他の労働者と比較して差別されるいわれはないから、派遣先事業主に雇用される他の同種の労働者の労働条件と同等とすべきものと考える。
 
 以上、当協議会は、派遣労働者の保護に資する改正を実現すべく、上記のとおり改正案の修正を求めるものである。

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