意見書・声明文
- 2010年01月26日
- みなし雇用制度を創設する旨の労働者派遣法改正を求める意見書
私たち全国青年司法書士協議会(以下、「当協議会」と言う)は、全国の青年司法書士約3,000名で構成する「市民の権利擁護及び法制度の発展に努め、もって社会正義の実現に寄与すること」を目的とする団体である。
近時、違法派遣の一態様である偽装請負が行われた事案において、請負人(派遣元)の労働者と派遣先事業主との間の黙示の雇用契約の成立を否定した最高裁判所の判決(最高裁判所平成21年12月18日判決。いわゆる、「松下プラズマディスプレ事件」判決)が示されたことを踏まえ、当協議会は、違法派遣を防止し、かつ、派遣労働者を保護する観点から、次のとおり労働者派遣法の改正について意見を表明する。
■ 意見の趣旨 ■
偽装請負、禁止業務への派遣受入れ、無許可・無届の派遣元事業主からの派遣受入れ、期間制限を超えての派遣受入れなどの労働者派遣法違反が行われた場合には、派遣先事業主の民事責任を強化して派遣労働者の保護を図る観点から、違反の事実について派遣先事業主に故意又は過失があり、かつ、派遣労働者に派遣先事業主に雇用されることについての同意がある限り、派遣先事業主と派遣労働者との間に、派遣先事業主に雇用される他の同種の労働者と同等の労働条件にて雇用契約関係が成立しているものとみなす制度(いわゆる「みなし雇用制度」)を創設する旨の労働者派遣法の改正を行うべきである。
■ 意見の理由 ■
上記最高裁判所判決は、「注文者が請負人の労働者に直接具体的な指揮命令を行ういわゆる偽装請負は、労働者派遣法2条1号にいう労働者派遣に該当」し、「職業安定法4条6項にいう労働者供給に該当する余地はな」い。「労働者派遣法の趣旨及びその取締法規としての性質、さらには派遣労働者を保護する必要性にかんがみれば、労働者派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合においても、特段の事情のない限り、そのことだけによっては派遣労働者と派遣元との雇用契約が無効になることはない。」との考え方を示したうえで、当該事案において、被上告人(請負人の労働者)と請負人との雇用契約を無効と解すべき特段の事情はなく、また、上告人(注文者)が当該労働者の採用に関与していたとは認められないこと、請負人から受けていた給与の額を上告人が事実上決定していたといえるような事情がうかがえないこと、請負人が労働者の配置を含む具体的な就業態様を一定の限度で決定し得る地位にあったものと認められることなどから、被上告人と上告人との間において雇用契約関係が黙示的に成立したものと評価することはできない、と判示したものである。
同判決に示された考え方及び判断によれば、偽装請負などの労働者派遣法違反があった場合にも、派遣労働者が、派遣先事業主に対して民事上の雇用責任を追及していくことは極めて困難である一方、派遣先事業主としては、労働者派遣法違反の事実について故意又は過失がある場合においても派遣労働者に対して使用者としての賃金支払義務その他の民事責任を負うことはないから、派遣先事業主において労働者派遣法を遵守するインセンティブが働かないことになる。
この点、労働者派遣法は、同法違反を防止するための制度的な担保として、労働局による指導、助言、勧告、改善命令及び事業停止命令(48条乃至49条の2)などを定めているが、こうした事後的な行政権の発動のみによっては違法派遣を未然に防止することが困難であることは自明である。また、労働者派遣法は、派遣受入可能期間の制限に関して、派遣先事業主の直接雇用努力義務(法40条の3)及び直接雇用申込義務(法40条の4乃至5)を設けているが、これらは派遣先事業主に課された公法上の義務に留まるために派遣労働者に司法上の救済を求める手段がなく、また申込の内容について何らの規制もかけられていないことから、労働者派遣法違反を防止する制度的担保として十分とはいえないものである。
そこで、当協議会は、労働者派遣法違反を防止させるための制度的担保として、同法違反について故意又は過失のある派遣先事業主の民事上の責任を強化することが必要であると考える。具体的には、偽装請負などの労働者派遣法違反があった場合には、違反の事実について派遣先事業主に故意又は過失がある限り、派遣先事業主と派遣労働者との間に雇用契約関係が成立したものとみなす制度(いわゆる「みなし雇用制度」)を導入すべきであると考える。もっとも、かかる制度の適用は、派遣労働者の同意がある場合に限られるべきことは、派遣労働者の雇用契約上の地位を保護する観点から当然である。
なお、みなし雇用制度により法的に擬制される派遣労働者と派遣先事業主との間の雇用契約関係における賃金等の労働条件については、派遣先事業主に雇用される他の労働者と比較して差別されるいわれはないから、同一価値労働・同一賃金の理念に基づき、派遣先事業主に雇用される他の同種の労働者の労働条件と同等とすべきものと考える。
このようなみなし雇用制度は、派遣先事業主において労働者派遣法の違反を防止するインセンティブとして機能するだけではなく、その適用があった場合に直接雇用が成立し、かつ、他の労働者と同等の労働条件が保障される点で派遣労働者の保護にも資するものである。
労働者派遣法を、派遣労働者の保護のための法としていくためには、みなし雇用制度の創設は不可欠であり、早期に法改正によって実現されるべきである。






